仕事は完璧なんだけど残業が多い……。このような人は「ムダな完璧主義」から脱却することで残業を大きく減らせます。
ここでいう「ムダな完璧主義」とは、結果やアウトプットの質を極端に追求しすぎるあまり、実際にはそこまでのクオリティが必要ない場面でも時間やリソースを過剰に投入してしまう状態を指します。このような完璧主義は、効率的な業務遂行を阻害し、時間を浪費します。結果として残業も多くなります。
ムダな完璧主義を防ぐことは、時間やエネルギーを適切に配分し、効率よく目標を達成するために非常に重要です。
そもそも完璧主義って悪いことなの?
「完璧主義ってそんなに悪いこと?」「成果物が完璧だからいいじゃん!」と思う方もいることでしょう。確かに、芸術やアートなどの分野ではその精密さや完成度の高さが大きな価値を生むため、完璧主義が評価されることも多いでしょう。「神は細部に宿る」と言いますものね。
しかし、「神は細部に宿る」を、普通の会社員やビジネスの現場にそのままあてはめるのは必ずしも正しくありません。
ビジネスの現場で完璧主義がムダになってしまう理由
完璧主義からなぜ脱却するべきなのか、それは、ビジネスの現場では完璧主義が不要だからです。不要なことをやっていて残業が多くなっている……。そう考えたら、ムダな完璧主義をやめようと思えるのではないでしょうか。完璧主義者である自分をどこか誇らしく思っている方にとっては少し耳の痛い話かもしれませんが、残業を減らしたいのなら以下を読み進めてください。
ビジネスでは「スピードと成果」が重視される
多くの仕事では、最終的なアウトプットが「必要なときに」「求められる水準を満たしている」ことが重要です。
細部にこだわりすぎて納期が遅れたり、コストが増えたりしていないでしょうか?それでは本末転倒です。たとえば資料作成でフォントやレイアウトに細かくこだわりすぎて、会議に間に合わなくなるのは典型的なケースです。
仕事の大半は意外に早く終わっている
パレートの法則によれば、成果の80%は、重要なタスクの20%によってもたらされると言われます。
つまり、本当に重要な部分を押さえるだけで、仕事の大半(80%)はカバーできるということ。
残りの20%の成果を求めるために時間やリソースを過剰投入するのは非効率的です。仕事の本質的な部分は、実は意外に早く終わっているのです。
完璧主義は本来の目的とずれる
本来、仕事に取り組む目的は、顧客満足度や自社の収益の向上に貢献するためです(もちろん、給与を得ることは大前提として)。顧客や会社に価値を与えるために仕事を頑張るわけです。
たとえば芸術の世界では「細部へのこだわり」が全体の完成度を高める直接的な要素になります。しかしビジネスでは細部を磨くこと自体が目的ではありません。そのため、完璧主義な人がいくらこだわっても、そのこだわりが顧客や会社にとって価値を生まないなら、意味がないのです。
チームでの仕事では協調性が重要
個人事業主で、自分ひとりで何かを作ったり売ったりする仕事なら、時間をかけて完璧なものを仕上げてもいいでしょう。たとえかけた時間に対する利益が少なくても、自分がきついというだけで、誰かに迷惑をかけることはありません。
しかし会社員やチームでの協力が求められる仕事でムダな完璧主義を発動すると、ほかのメンバーの作業に影響を与えることがあります。個人で細部にこだわるあまりプロジェクト全体が遅れたり、ほかの人の負担が増えたりするのは、組織の効率を損なう原因です。ムダな完璧主義を貫くことで、周囲に迷惑をかけてしまうのです。
心理的な負担が増える
完璧主義を掲げていると、常にプレッシャーを感じやすくなり、ストレスや燃え尽き症候群の原因になります。結果的に、継続的なパフォーマンスに悪影響を及ぼします。「完璧主義って疲れますよ」ってことです。
ビジネスパーソンに必要なのはバランス感覚
芸術家、アーティスト、作家、漫画家などと違って、一般的なビジネスパーソンに求められるのは、限られた時間とリソースの中で効率よく成果を出す能力です。もちろん、細部に注意を払うべき場面もありますが、それが全体のゴールや価値につながるかを見極める必要があります。要はバランス感覚が重要ってことです。
完璧主義を追い求めることは、細部を磨くことが直接的な価値に直結する場面でこそ意味があるものです。
ムダな完璧主義からの脱却方法
「ムダな完璧主義」から脱却して「バランス感覚」を身につけるには、いくつかのステップや習慣を取り入れることが効果的です。以下の方法を参考にしてください。
- 完璧は幻想だと認識する
- 仕事の目的を常に意識する
- 時間制限を設定する
- 「80点でOK」を受け入れる
- 誰かに確認してもらう
- 優先順位を明確にする
ひとつずつ解説します。
完璧は幻想だと認識する
「完璧な成果物」など存在しないことを自覚することが、脱却の第一歩です。ビジネスはスピード感も重視されるため、「早く出す」「改善する」プロセスが重要と捉え直しましょう。
完璧主義であることをどうしてもやめられない方は、「時間内で最善を尽くす!」を心がけてみてください。完璧主義の方って、自分の仕事に対する高い基準や責任感があるんですよね。「もっとよくできる」と思うからこそ、完璧主義になる。そのことは素晴らしいです。
一方で、ビジネスパーソンとして時間やリソースを無駄には使えないという現実もあります。だから、ある程度のところ区切りをつけて次に進む。それこそがプロの仕事。そう捉えると前向きに完璧主義から脱却できるのではないでしょうか?
仕事の目的を常に意識する
タスクやプロジェクトの目的が何かを明確にし、「何が最も重要か」を見極めるクセをつけましょう。たとえば資料作成なら、「誰に」「何を伝えるのか」を重視し、それ以外は最小限に抑えます。
仕事に取り組む際に、以下の質問を自分に問いかけるようにすると、仕事の目的からずれなくなります。
- この作業は本当に必要か?
- どれくらいのクオリティが適切か?
「80点でOK」を受け入れる
完璧主義ということは、常に100点以上でないと気が済まないということです。しかし、ビジネスの現場において、常に100点満点が求められるわけではありません。
①1週間のうちに、100点満点の成果物をひとつ提出できる人
②1週間のうちに、80点の成果物を2つ提出できる人
上記の2パターンの人がいるとして、評価されやすいのは②の人です。なぜなら、80点でも十分に実用レベルなら、数をこなせるほうが組織としての成果が上がるからです。
つまりスピードと量のバランスが評価基準として重視されるわけです。そのため必要な基準を満たしていれば、それ以上の時間をかけるのをやめましょう。 「十分に良い」が達成されれば、次に進む勇気を持つことが大切です。
また、自己評価をしすぎないことも大切です。「これで十分なのか?」と迷うより、「これで目的を達成できる」と割り切る習慣をつけましょう。
時間制限を設定する
取り組むべきタスクに対して「ここまでに終わらせる」と決めることで、自然と重要な部分に集中できるようになります。たとえば「資料作成には2時間だけ使う。あとは見直さない。」と決めてしまいます。
おすすめは「タイムボックス」の活用です。
誰かに確認してもらう
自分の判断だけだと、その成果物がどの程度の出来なのかがわからないことがあります。そんなときは、誰かに確認してもらいましょう。他人からフィードバックをもらうことで、「十分なレベル」なのかを客観的に確認できます。
フィードバックをもらうときのポイントとして、「途中で確認してもらう」ことが大事です。完成したあとに確認してもらうのではなく、完成する前で何回かフィードバックをもらいましょう。方向性が間違っているときに軌道修正できるので、完成後に直すより効率的です。
優先順位を明確にする
完璧主義な方は、何でもかんでも完璧にこなそうと考えがちです。しかしそれでは残業がいつになってもなくなりません。タスクには優先順位をつけ、本質的な部分にのみ時間を集中させるようにしましょう。
優先順位をつける方法に「重要度と緊急度のマトリクス」というものがあります。タスクを「重要度」と「緊急度」で整理し、重要だが緊急でないタスクに必要以上のリソースを割かないようにする方法です。どのタスクの優先順位が高いのかわからない方は、試してみてください。
まとめ
「何を優先し、どこで妥協するか」を見極める力が、バランス感覚を身につけるカギです。そのためには、目的を意識し、時間やリソース配分をコントロールする習慣をつけることが重要です。「完璧」ではなく「適切なレベル」を意識しながら進めていくことで、効率的で成果の出る働き方ができるようになります。そうすれば、おのずと残業が減っていきます。