「毎日帰れるのは深夜」「仕事終わりは疲れて何もできない」といった声は、現代の会社員からよく聞かれる悩みのひとつです。プライベートの時間を削ってまで働く日々に疑問を感じ、「もっと残業を減らしたい」と考える人が増えています。
もし今の職場でその状況が改善される見込みがないのであれば、転職によって働き方を見直すというのも有力な選択肢です。ただし、転職先も残業が多ければ意味がありません。そのため、残業が多い職場の特徴や、残業が少ない職場の見極め方を知っておく必要があります。
残業が多い職場の特徴とは?
まず、なぜ残業が多くなってしまうのか、残業が多い職場の特徴を知っておきましょう。その背景を知ることは、次の職場選びにも役立ちます。
業界・職種特有の忙しさ
業界や職種の特性によっては、そもそも残業が前提のような働き方になってしまっているケースがあります。
たとえば以下のような業界では、業務量の多さや納期の厳しさ、突発的な対応の多さなどから、労働時間が長くなる傾向があります。
- 広告業界:クライアント対応が最優先のため、急な依頼や修正が発生しやすく、スケジュールが流動的です。プレゼンや撮影前は特に多忙になり、長時間労働が常態化している会社も少なくありません。
- コンサル業界:クライアントごとに異なる課題を短期間で解決するため、膨大なリサーチや資料作成が必要です。「結果を出すまで働く」という姿勢が強く求められる厳しい世界です。
- 運輸業界:物流や交通機関では24時間体制の勤務や突発的な対応が求められる場面も多く、休憩が取りづらかったり、長時間の拘束が常態化したりしています。慢性的な人手不足も重なり、シフトが埋まらないことで残業が発生することもあります。
- エンタメ業界:イベントやリリースのスケジュールに合わせて業務が集中するため、繁忙期は非常に忙しいです。また、夜間や週末の稼働も多く、業務の境界が曖昧になりやすい傾向があります。
このように、業界構造や働き方そのものが残業と結びついている場合、個人の工夫だけでは解決が難しい部分があります。そのため、転職の際には業界選びも大切なポイントです。
属人的な業務体制
業務が個人に依存している職場や、引き継ぎやマニュアルが整っていない職場では、効率が悪いため残業につながる可能性があります。以下のような特徴がある職場には注意が必要です。
- 属人化:「あの人にしかできない」業務が多いなど、一部の社員に業務が集中し、その人だけが常に残業している。
- マニュアルや引き継ぎが不十分:仕事の進め方が個人の経験や暗黙知に頼っており、ほかの人がカバーできない。
- 業務分担が曖昧:役割が明確でないため、つい真面目な人や断れない人にばかり仕事が集中する。
こうした環境では、個人の負担が偏るだけでなく、チーム全体の効率も落ち、結果として全員が長時間労働に巻き込まれる悪循環に陥ります。
長時間労働が評価される文化
「長時間会社に残っている人=頑張っている人」と見なされる風土があると、必要以上に残業せざるを得ない状況に陥ります。特に役員の高齢化が進んでいる会社や、保守的な考え方の会社などは、いまだにこうした文化が根付いています。地方ではこのような会社は非常に多いので注意が必要です。
以下のような特徴がある職場が該当します。
- 成果よりもプロセス重視:結果よりも「どれだけ遅くまで頑張っていたか」が評価される。
- 上司が残っていると帰りづらい:トップダウンの文化が強く、上司より先に帰ることがタブー視されている。
- 忙しい自分に満足している人が多い:個人の意識として、長時間働いている自分に価値を感じてしまい、結果的に無駄な残業を正当化してしまうこともあります。
このような職場文化は、個人の意識改革だけでは変えることができないため、転職を通じて環境自体を変えるのが効果的です。
転職活動で残業が少ない会社を見極めるためのポイント
「今より残業が少ない会社に転職したい」と思っても、実際にどんな企業が働きやすいのか分からないという方も多いでしょう。以下のポイントを押さえておくことで、効率よく求人を絞り込むことができます。
業界選びがポイントのひとつ
まず注目すべきは、そもそも残業が発生しにくい業界かどうかという視点です。業界全体として労働時間の管理が進んでいるかどうかを見極めることで、ブラックな労働環境を避けやすくなります。
一般的に、以下のような業界は残業が少なめといわれています。
- インフラ系(電力・ガス・水道・通信など):社会インフラとして安定性が求められるため、労働時間管理にも厳しく、ワークライフバランスを重視する社風が根づいています。
- メーカー(特に大手):工程や納期があらかじめ決まっているため、計画的に業務が進められやすい環境です。また労働組合が強い企業も多く、時間外労働に厳しい傾向があります。
- 官公庁・公的機関関連:公務員や独立行政法人などは、繁忙期を除けば残業が少ないケースが多く、決まった時間で業務が終わる文化が根づいていることが多いです。
もちろん部署や職種によっても差はありますが、業界の特性を知ることで、残業しにくい土壌があるかどうかの判断材料になります。
求人票のチェックポイント
求人票は企業の情報を見極める第一歩ですが、表記には注意が必要です。
とくに注意が必要なのは「固定残業代込み」「みなし残業〇〇時間」です。これらの表記がある場合、記載時間分の残業があらかじめ給料に含まれており、実際にはその時間を超えることも多く見られます。とくに「45時間以上」など高めに設定されている場合は、恒常的な残業が前提の職場である可能性が高いです。
また、勤務時間と終業時間の記載について、鵜呑みにするのは危険です。たとえば「9:00〜18:00(休憩1時間)」と書かれていても、実際には19時や20時まで働いていることは多々あります。実際の労働時間に関する補足情報があるかどうかもチェックしましょう。
求人票に「月の平均残業時間〇〇時間」と記載されている場合、その数字が20時間以内であれば比較的ホワイトな可能性が高いです。ただし「平均」と書かれているため、時期や部署によって偏りがあることも考慮に入れましょう。
企業口コミサイトの活用
求人票だけでは見えないリアルな労働環境を知るには、口コミサイトの活用が効果的です。
たとえば転職会議やOpenWorkなどでは、実際にその企業で働いていた(または現在働いている)人の声を確認できます。特に「残業時間」「職場の雰囲気」「退職理由」などの項目に注目すると、企業の体質が見えてきます。
「定時で帰れる人はいるのか」「有休の取りやすさ」「繁忙期の残業状況」など、現場感のある情報を得られるのが強みです。
ただし、口コミはあくまで個人の主観です。企業ホームページや求人票だけでは分からない内情を補完するツールとして、上手に活用しましょう。投稿数が多く、複数の投稿で傾向が一致している内容に注目すると信頼性が高まります。
なお、ある程度規模の大きい会社でないと掲載されていないことも多いです。中小・零細企業への転職は業界内の知人など身近なところから情報を集めることも大切です。
転職面接で企業に確認すべきこと・質問方法
残業の実態を見極めるには、面接時の質問の仕方が重要です。以下のような聞き方をしてみましょう。
「定時で帰れる日はどのくらいありますか?」
この質問では、残業が日常的なのか、それとも例外的なものなのかを確認できます。数字(週に何回程度など)での回答を引き出せると、より具体的な判断がしやすくなります。
「月あたりの残業時間の平均はどれくらいですか?」
シンプルですが有効な質問です。実際の労働時間を具体的に把握するためには、月単位での残業時間を聞くのがおすすめです。
「平均ですからね」などと強調された場合、一部の人が極端に残業しているケースも考慮しておきましょう。
「繁忙期はいつ頃で、どの程度忙しくなりますか?」
残業の有無だけでなく、繁忙期の波やサイクルを理解しておくことも、働きやすさの大きな要素です。忙しさが「一時的かつ予測できる」か、「突発的で慢性的」かを見極めましょう。
ほかには、逆質問の場を利用して、「社員の働き方や労働時間に対してどのような取り組みをされていますか?」といった聞き方も効果的です。
面接でなかなか残業に関する質問をしづらい方は、信頼できる転職エージェントを活用するのもひとつの方法です。
残業をあまりしたくない事情をしっかり伝えたうえで、紹介先の実態を教えてもらいましょう。紹介した人の残業が多すぎて早期退職すると、エージェント側も企業からの成功報酬が減る可能性があるため、事実を教えてくれる可能性があります。
転職先に選びたい残業が少ない職場の特徴と働き方
残業が少ないと一口に言っても、そこには企業文化や業務設計の工夫が大きく影響しています。ここでは、実際に残業が少ない会社によく見られる共通点と、そうした職場で働く人たちの特徴的な働き方を解説します。以下に挙げるような職場を選ぶことで、残業を減らせる可能性が高まります。
業務の標準化が進んでいる
マニュアルや業務フローが整備されており、個人に業務が属人化しない体制が構築されている職場は、残業が少ない可能性が高いです。新人でも一定の品質で仕事を進められる仕組みがあるため、担当者に過度な負荷がかからず、残業が発生しにくいのです。
残業の日があったとしても、「どうしても必要な残業」に限られるため、慢性的に残業が発生することはあまりありません。
ポイントとしては、「個人の頑張り」ではなく、「仕組みで回る」組織は、残業が少ない傾向にあります。
無駄な会議や報告が少ない
「時間を奪わない」コミュニケーション設計がされている会社では、残業が自然と減る傾向があります。
たとえば会議は目的が明確で、30分以内で終わるものが基本、日々の情報共有はチャットやドキュメントで済ませるスタイルを採用している会社が典型です。報告や承認フローも合理的で、Excelや紙でのムダな手間がない職場も残業は少ない傾向にあります。

働きやすい職場は、社員の時間コストを重視して設計されています。
「時間内で成果を出す」という文化
長く働くことではなく、成果を出すプロセスが評価されるカルチャーがある企業は、定時退社が当たり前ということも少なくありません。たとえば以下のような職場が該当します。
- 業績評価が「残業時間」ではなく「アウトプット(成果)」に基づいている。
- 無駄を減らすことが推奨され、「働き方」自体の改善が評価対象になる。
- 管理職も率先して定時で退社するため、部下も帰りやすい雰囲気がある。
「働いている姿」よりも「何を達成したか」が重視される企業文化こそ、残業が少ない環境の本質です。
ただし、実際には時間内で成果を出すことが不可能な環境で、持ち帰り残業せざるを得ないことがあります。そのため、口先だけで言っているのか、本当に時間内で成果を出す文化があるのか見極めが必要です。
今働いている人たちが実際に「どのような工夫をして時間内で成果を出しているのか」を質問してみるとよいでしょう。納得感のある回答があれば、時間内で成果を出す文化である可能性が高まります。
まとめ
今の職場での働き方に限界を感じているなら、転職によって残業を減らすという目標を実現することは十分に可能です。
情報収集と企業選びの工夫をすれば、会社員でも時間と心に余裕のある働き方は実現できます。無理をし続けるのではなく、自分の時間を取り戻すための転職を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。