会議は数を減らしただけでは、情報共有や意思決定の質を落としてしまうリスクがあります。
そこで本記事では、ただ会議を減らすのではなく、会議を短く、効率的に、そして意味のある場に変えるための実践的なテクニックを紹介します。
会議の準備段階から進行、そして見直しに至るまでの5つのポイントに絞り、すぐに使えるルールやツール活用法を解説します。
会議の質と効率を両立するための視点を取り入れて、働き方改革を一歩進めましょう。

この記事はこんな方におすすめです。
- 会議の長さや内容にモヤモヤしており、「この時間、本当に必要?」と感じている方
- チームや部署での会議運営を改善したい管理職・リーダー層の方
- 会議の生産性をどう高めるか悩んでいる方
※本記事では、会議を効率化する具体的な手法にフォーカスして解説しています。無駄な会議が増える理由や、会議を減らすための基本を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
1.アジェンダテンプレートの活用で迷走する会議を防ぐ
会議の効率化を目指すうえで、基本的かつ重要なのが「アジェンダ」の設定です。
アジェンダとは会議の議題や進行計画のことです。
限られた時間内で成果を出すために、事前準備としてアジェンダをしっかり作成し、共有することが欠かせません。
ここでは、アジェンダがない会議の問題点を整理したうえで、項目の具体例と共有・更新方法を解説します。
アジェンダがない会議の問題点
アジェンダが設定されていない会議は、話題が散漫になりやすく、参加者が何を話し合うべきかわからず迷走します。
目的やゴールが曖昧なため、発言が抽象的になり、結論が出ないまま時間だけが過ぎてしまうことが多いです。
また、誰が何を決めるのかが不明確なまま進行すると、責任の所在もあいまいになり、会議後のフォローアップが難しくなります。
結果として、時間だけでなく労力も無駄に消費されるため、働き方改革や残業削減の妨げになります。
効果的なアジェンダテンプレートの項目例
効果的なアジェンダを作成するために、最低限押さえておきたい項目は以下のとおりです。
- 会議の目的
→ なぜこの会議を開くのか、参加者全員が共通理解を持てるように明確にします。 - 期待されるゴール(決定事項)
→ 会議の終わりに何を決めるのか、達成すべき成果を具体的に示します。 - 議題ごとの内容と進行順
→ 話すべきトピックを整理し、どの順番で話すかを決めておきます。 - 各議題に割り当てる時間
→ 会議全体の時間配分を決め、無駄なく進行できるようにします。 - 参加者の役割(司会・記録・発言者)
→ 進行する人、議事録を取る人、発言者などを明確にし、役割分担をはっきりさせます。 - 準備物や事前確認事項
→ 参加者が事前に準備すべき資料や確認事項を記載し、スムーズな会議進行を助けます。
これらの項目を網羅したテンプレートを用意しておけば、参加者全員が事前に情報を把握できます。
限られた時間内で効率的に結論を出しやすくなり、会議の質が向上します。
アジェンダの共有・更新方法
アジェンダのテンプレートはGoogleドキュメントなどを使って作成し、会議の主催者や担当者が内容を入力しましょう。
会議当日までに参加者からのコメントや質問を受け付け、必要に応じて内容を更新しましょう。

会議中もドキュメントを開いたまま進行し、議事録の一部としてリアルタイムでメモを追記することで、情報共有がスムーズになります。
2.Googleドキュメントで議事録をリアルタイム共有する
議事録は会議の記録として重要ですが、会議終了後に作成して配布するだけでは、情報共有のスピードや正確性に課題が残ります。
そこでおすすめしたいのが、Googleドキュメントを使った議事録のリアルタイム共有です。
会議中に参加者全員が同じ画面を見ながら内容を確認できるため、認識のズレが減り、必要な修正や補足もその場で反映できます。
この方法は、情報共有の効率化はもちろん、参加者の関与を促し、会議の質を向上させる効果があります。
リアルタイム議事録のメリット
会議の進行に合わせて内容が逐一反映されるため、参加者は自分の発言が正確に記録されているかすぐに確認できます。
参加者全員がリアルタイムで確認できるため、誤解や認識のズレをその場で解消でき、会議後の混乱や二度手間を防げます。
自分の発言がその場で記録されることで参加者の関与度も高まり、発言に対する責任感や会議への主体性が生まれるという心理的なメリットもあります。

会議終了後の修正や追記作業が大幅に減るので、議事録作成者の負担も軽減されます。
議事録の共有方法と注意点
議事録をGoogleドキュメントで共有する際は、事前に共有設定を適切におこないましょう。
閲覧権限のみならず、編集権限を与える範囲を明確にし、誰が書き込むかを事前に決めておくとスムーズです。
共有リンクは会議の参加者全員に送るか、社内の共有フォルダに保存しておく方法が一般的です。
ただし、編集権限が多すぎると内容が混乱したり誤記が増えたりするリスクがあります。そのため編集は主に記録担当者に任せ、コメント機能で参加者が補足や指摘を入れられる形が理想的です。

個人情報や機密事項の扱いにも注意し、必要に応じてアクセス制限をかけることも忘れないようにしましょう。
3.「情報共有パート」と「検討パート」を分ける
この2つの目的を切り分け、進め方を工夫するだけで、会議時間の大幅な短縮と成果の向上が見込めます。
とくに情報共有は会議前に済ませておくことで、当日は本質的な議論と意思決定に集中できます。
情報共有は会議前に終わらせておく
情報共有に会議の時間を使っていると、全員に説明が行き渡るまでに無駄な時間がかかります。
たとえば業績報告やスケジュール、資料などは、会議の1営業日前までに参加者向けにアップしておきましょう。
方法は、GoogleドキュメントやNotionなどの共有ツールを使う、事前に示したフォルダに入れておく、メールで配信しておくなどがあります。
共有資料には、「どの部分を重点的に読んでおくか」や「理解しておくべき前提」などの補足説明も添えると、参加者の理解が深まります。
チャットやメールで「○月○日会議の事前資料です。○○の検討に集中する予定です」と一言添えるだけでも、準備の質が変わってきます。
検討パートは「意思決定の場」に特化する
「この会議の目的は○○を決めること」を冒頭で宣言したうえで、参加者の意見を引き出し、方向性をまとめていきます。

先述した「アジェンダ」にも、会議の目的を記載してありますね。
資料の読み上げや説明は行わず、読んでいることを前提に話を進めることが重要です。
検討するテーマが複数ある場合は、優先順位の高い1〜2点に絞ることで、議論が浅くならず、深い合意形成につながります。
情報共有と検討を分ける仕組みを習慣化するコツ
このスタイルを定着させるためには、最初の数回の会議運営がポイントです。
まずは定例会議などで「今後は情報共有は事前資料で行い、当日は検討と決定に集中します」とルールを明文化しましょう。
そして、たとえ資料未読の参加者がいても、その場で説明し直すことは避けるのが原則です。
「読んでこないと置いていかれる」という空気が、徐々に行動を変えていきます。
また、一度に全社で実行するのではなく、部署やチーム単位で試し、成功事例として展開するのも有効です。
ドキュメント共有のテンプレートや会議アジェンダ例を整備しておくと、ほかの部署やチームにも取り入れやすくなります。

「情報は読む、会議は考える」という文化が根付けば、会社全体で会議の在り方そのものが変わっていきます。
4.事前に意見を集め、会議を意思決定の場に限定する
そのための有効な手段が、チャットツールを使った事前の意見収集です。
あらかじめ論点や課題に対して各メンバーの考えを集約しておけば、会議当日は検討や結論のすり合わせに集中できます。
また、皆の前での発言にハードルを感じる人の声も拾いやすくなります。
チャットツールを使った事前ヒアリングのやり方
SlackやTeams、Chatwork、LINE WORKSなどのチャットツールは、事前に意見を集める場として有効です。
たとえばSlackを使う場合、まず、会議の数日前に「次回会議の議題」と「検討したいポイント」を明確に書いたスレッドを立てます。
「次回の施策Bについて、導入の是非を話し合います。皆さんの立場からの懸念点や賛成理由を教えてください」など、回答しやすい形で投稿します。
これにより、会議前にさまざまな視点の意見が集まり、論点を事前に整理できます。
集まったコメントは一覧で可視化されるので、進行役はそれをもとに会議の進行プランを作ることも可能です。
ほかには、あえて匿名アンケート形式(Googleフォームなど)で意見を集めれば、言いづらい意見も拾いやすくなります。
会議の役割を意思決定に限定する効果
事前に意見を集約しておくことで、会議は「意見を集める場」ではなく「意思決定の場」に絞ることができます。
このシンプルな変化だけで、会議のスピード感と精度が劇的に上がります。
また、参加者の集中力も維持しやすく、「この会議では○○を決める」といった明確なゴールに向かって全員の意識が統一されます。
事前に投稿された意見のうち、すでに大方の結論が出ているものについては、会議で議論せずに即決できる場合もあります。
こうした判断の高速化は、会議の短縮だけでなく、意思決定のタイミングを逃さないという点でも重要です。
発言格差の抑制と記録の活用
対面やオンライン会議では、どうしても発言しやすい人とそうでない人の「発言格差」が生まれがちです。
しかし、チャットツールでの事前意見収集なら、時間制限がなくじっくり考えてから投稿できます。その場ですぐ発言するのが苦手な人でも意見を出しやすいのがポイントです。
また、チャットでのやり取りは記録として残るため、後から内容を振り返ったり、議論の流れを可視化したりすることも可能です。

誰がどの意見を出したかを明確に追跡でき、意思決定の背景が曖昧になりません。
5.定例会議は「やめる・減らす」の見直しを月1でルール化
業務の効率化を考えるうえで、見落としがちなのが定例会議の存在です。
毎週のように同じメンバー・同じ時間帯で開催される会議が、本当に今も必要なのか、立ち止まって見直しているチームは意外と少ないのではないでしょうか?
会議は一度始まると習慣化しやすく、変化に乏しいまま続いてしまうことが多くあります。
なんとなく続く定例会議の問題
多くの組織で行われている定例会議は、一度スケジュールに組み込まれると、それが当たり前になり、疑いなく継続されがちです。
しかし、「やらない」という選択肢がないまま続く会議は、目的を失い、情報共有の場や顔合わせの場として形骸化してしまうこともあります。
実際に参加者が「別に出なくても困らない」と感じているケースや、「話すことがないのに無理に発言している」といったケースはよくあります。
また、毎週の定例会議があることで「そのときに話せばいい」と情報伝達が後回しになり、意思決定のスピードが鈍る原因にもなります。
こうした定例会議は、まず「本当に必要か?」を見直すことが必要です。
月1回の振り返りルールの作り方
定例会議の「やめる・減らす」を実現するには、「なんとなく続けない仕組み」を組み込むことが重要です。
おすすめは、月に1回、定例会議の価値を見直すチェックタイミングをあらかじめ設定することです。
たとえば「第1週の会議後5分を使って、継続の必要性を全員で確認する」など、運用に負荷をかけない形で導入できます。
見直しの際には、次の3つの視点を設けると効果的です。
- 今月この会議で決まったこと・得られた成果は何か?
- この情報や意思決定は、会議以外の手段でも可能だったか?
- 来月以降もこの頻度・メンバーで必要か?
こうした検討を習慣化することで、「そもそもこの会議は要るのか?」という視点が自然に浸透していきます。
チェックの結果、「隔週開催で十分」と判断すれば回数を減らし、「目的がなくなった」と判断すれば、勇気を持って廃止しましょう。
こうした微調整を定期的に繰り返すことが、時間の最適化につながります。
ゼロベース思考で会議の必要性を見極める
会議を見直す際に有効なのがゼロベース思考です。
既存の枠組みを前提とせず、「もし今から新しくこの会議を立ち上げるなら本当に必要か?」という視点で検討します。
「これまでやってきたから」「一応あったほうがいいから」といった惰性を断ち切ることができるのが、ゼロベース思考の強みです。
具体的には、「この会議が存在しなかったとしても、業務に支障が出るか?」と問うところからスタートします。
答えが「支障なし」なのであれば、それは廃止のサインです。「目的とゴールが言語化できない」「成果物が何もない」会議も、開催の必要性を疑うべき対象です。
このようなゼロベースでの見直しを定期的に行うことで、本当に必要な会議だけが残り、時間とエネルギーのムダを削減できます。

会議は「継続するもの」ではなく、「必要だから開催するもの」です。
まとめ
本記事で紹介した会議効率化の手法は、ちょっとした工夫とルールの設定で実践できるものばかりです。
- アジェンダテンプレートを活用して、会議の迷走を防ぐ
- リアルタイムに議事録を共有し、認識のズレをなくす
- 「情報共有」と「検討」を分けて、会議を短く・濃くする
- 事前に意見を集め、会議を「決める場」に限定する
- 定例会議は月1で「やめる・減らす」を見直す仕組みをつくる
ひとつ取り入れるだけでも、会議のあり方は大きく変わります。限られた時間の中で最大の成果を出すために、ぜひ試してみてください。