仕事におけるチャットでのやりとりは便利な反面、内容が不十分だったり曖昧だったりすると、何度もメッセージをやりとりする「ラリー」が増えてしまいます。
この無駄な往復は仕事の効率を下げ、ストレスの原因にもなりがちです。
そこで本記事では、チャットのラリーを減らしてスムーズにコミュニケーションを進めるための具体的な書き方やコツを紹介します。
短い時間で成果を上げ、心にも余裕を持つための実践的なヒントが満載です。

この記事はこんな方におすすめです。
- チャットでのやりとりが長くなりがちで業務が滞っている方
- リモートワークや時短勤務で効率的なコミュニケーションを取りたい方
- チャットの書き方を改善して無駄な時間を減らしたい方
なぜチャットのラリーが生産性を下げるのか?
チャットは気軽に使える分、つい「少しずつ」情報をやりとりしてしまいがちです。
しかし、ラリーが多くなるとそのたびに手を止める必要が生まれ、仕事の流れが断ち切られてしまいます。
ここでは、ラリーが増えることでどのような支障が出るのかを整理し、なぜそれが生産性低下につながるのかを明らかにします。
仕事が止まる原因は「情報の小出し」
チャットでやりとりする際、「まずひとことだけ送る」「聞きたいことだけ書く」といった「情報の小出し」がラリーを引き起こす大きな原因です。
たとえば「これ、どう思う?」という一文だけでは、受け取った側は「何の話?」「どの部分のこと?」「いつまでに答えればいいの?」と疑問が浮かび、やりとりが必要になります。
このような状態では、相手がすぐに判断できないため、返信が遅れたり、さらなる質問が発生したりします。
結果として、初動は早くても、全体の完了までに必要な時間はかえって長くなってしまいます。
とくに在宅勤務や時短勤務で早く帰る人の仕事では、この「すぐに確認できない」状況が日常的に起こりやすく、1回1回のやりとりが業務全体に与える影響も大きくなります。
また、小出しにすることで「思考の浅さ」や「準備不足」の印象を与えることもあり、受け手の信頼を損ねる可能性すらあります。
非同期でのやりとりにおいては、一度で情報を渡しきる意識が欠かせません。
これは、自分の時間だけでなく、相手の時間も守ることにつながります。
リアルタイムで返せないことで生じる「待ち時間」のロス
チャットは便利ですが、全員がいつでも返信できるとは限りません。
相手がミーティング中だったり、別の作業に集中していたりすれば、返答までに数時間かかることもあります。
「とりあえず送っておこう」「あとで返ってくるだろう」と気軽に送ったつもりでも、相手にとってはそのメッセージに対応するために文脈を読み解いたり、追加質問をしたりする手間がかかります。
この「やりとりの合間」に発生する待ち時間が、結果的にタスク全体のスピードを大きく鈍らせます。
とくにラリーが複数発生している場合、別のやりとりの返信を待っている間にこちらも作業が止まり、双方の進行にブレーキがかかる状態になります。
つまり、非同期であることのメリットを活かせず、実質的にはリアルタイム対応のようなストレスを生み出してしまっているのです。
こうした状態が続くと、チャットでのやりとり自体が負担に感じられるようになり、コミュニケーションそのものの質も低下します。

少ない回数で完結するチャットが、時間と精神的コストを抑えるために欠かせません。
「伝わったつもり」が混乱を招くケースも
チャットのやりとりにおいて、「自分は伝えたつもりだったけど、相手は理解していなかった」というすれ違いはよく起こります。
たとえば、「例の件どうなりましたか?」というメッセージを送っても、相手が「例の件」を正確に覚えていなければ、曖昧な認識のまま返信してしまうか、聞き返されることになります。
これもまた無駄なラリーの原因になりますし、「なんで通じないの?」という不満につながりやすいポイントです。
また、意図が十分に伝わっていないまま相手が対応してしまうと、後になって「認識がズレていた」と判明することもあります。
これでは単なる時間のロスにとどまらず、業務の手戻りや信用問題にも発展しかねません。
テキストのみでのコミュニケーションでは、口調や背景情報が伝わりづらいため、「丁寧すぎず、簡潔すぎず」のバランスが求められます。

「伝わったつもり」を防ぐには、チャットの構成と情報の粒度が重要です。この点については、次章以降で解説していきます。
ラリーを生むNGチャット例
ラリーが増えてしまう原因の多くは、ちょっとしたチャットのクセにあります。
本人に悪気がなくても、伝え方が曖昧だったり、情報が不足していたりすると、相手はその都度確認をしなければならず、往復が発生します。
ここでは、特にありがちな3つのNGチャットのパターンを紹介し、「どこが問題なのか?」を解説します。
自分自身のチャットにも思い当たる点がないか、チェックしてみてください。
これ、どう思う?
「これ、どう思う?」と用件だけを伝えるのは、一見するとシンプルでよさそうですが、受け手は困ってしまいます。
何の話題なのか、どの部分に意見を求められているのか、返信の方向性がつかめないからです。
たとえば、資料を添付して「これ、どう思う?」と言われても、その資料のどこを見てほしいのかがわからないと、読み取るだけで時間がかかります。
「どの視点で意見を求められているか」が不明確な場合、確認のためのラリーが発生する可能性が高まります。
また、相手が資料を見ていない前提なら、その資料の内容を説明する追加メッセージも必要になります。
つまり、用件だけを伝えるチャットは、複数の往復を誘発する要素が含まれているのです。
たとえば「◯◯の件について、◯◯の観点で意見を聞きたい」と目的を明確にするだけで、ラリーの回数は確実に減ります。
相談したいことがある
チャットで「相談したいことがある」とだけ書いて送ると、相手は何についてなのかを聞き返す必要が生じます。
また、内容によっては事前準備や資料が必要な場合もあるため、いきなり「相談したい」と言われても対応ができないことがあります。
「情報不足のメッセージ」は、いったん保留されてしまい、タイミングによっては返信に数時間〜数日かかることもあります。
その結果、やりとり全体が遅延し、「相談したい」と思ったタイミングからどんどん先延ばしになってしまいます。
しかも、相手が対応しづらいことで相談の心理的なハードルが高くなり、コミュニケーションの断絶を招くこともあります。
相談を持ちかけるときは、「概要」「希望する手段(チャット・通話)」「いつまでに」を明記することで、スムーズなやりとりが実現できます。

「相談によって何を決めたいのか」を伝えることが、ラリーを減らすカギです。
時間あったら見てください
「時間あったら〜」「お手すきの際に〜」といった表現は丁寧で相手に配慮しているように見えますが、チャットのやりとりにおいては曖昧さがデメリットになります。
たとえば「時間あったら見てください」とだけ言われた側は、以下を判断する材料が不足している状態になります。
- どのくらい急ぎなのか
- 優先順位は高いのか
- 何を見て、どうすればいいのか
結果として、対応のタイミングを逃したり、放置されてしまったりする可能性が高まります。
また、こうした表現が頻発すると、仕事のスピード感や優先順位の調整がうまくいかず、組織全体のパフォーマンスにも影響を及ぼします。
チャットでは、曖昧な表現を避け、「何を・いつまでに・どうしてほしいか」を明確に伝えることが大原則です。

行動を引き出せる具体的な依頼を心がけましょう。
ラリーを減らす!ビジネスチャットの基本構成はこの3つ
チャットでのやりとりをスムーズに進めるには、伝える内容の構成を意識することが大切です。
相手が一読しただけで状況を把握し、判断や行動に移れるメッセージであれば、追加のラリーは必要なくなります。
以下では、ラリーを最小限にするためのチャットの基本構成を3つの要素に分けて解説します。
1.目的(なにをしたいのか)
まず伝えるべきなのは、「このチャットは何のために送っているのか」という目的です。
目的が明確であれば、相手はそのメッセージをどの視点で読めばよいのかをすぐに理解できます。
「確認すればいいのか」「判断を求められているのか」「返信だけでいいのか」など、行動を決めやすくなります。
逆に目的が曖昧なままだと、受け手は意図を読み取るために何度も読み返したり、補足を求めたりする必要が出てきます。
たとえば以下のように書き出すと、意図を明確にできます。
- ご相談があり、メッセージを送りました。
- 確認してほしい点があるので共有します。
- 判断をお願いしたく、ご連絡しました。

一文添えるだけで、読み手の理解スピードは大きく変わります。非同期コミュニケーションでは特に重要なポイントです。
2.要点(背景・選択肢・判断基準など)
目的を伝えたら、次に要点を整理して伝えます。
以下のような情報を含めると効果的です。
- 背景:この依頼・質問に至った経緯
- 選択肢:すでに検討済みの案、または選べる選択肢
- 判断基準:何をもとに判断・対応してほしいか
これらの情報があると、相手は「そのチャットをどう読めばいいか」「どこに注目すべきか」が明確になり、返信が圧倒的に早くなります。
たとえば……
ご相談です。来週のイベントの案内文ですが、案A・案Bの2つで迷っています。
どちらも字数は同じですが、Aはカジュアル、Bはフォーマル寄りです。
雰囲気に合う方をご意見いただけると助かります。
このように要点をまとめておくことで、相手の確認負荷が下がり、返信の質とスピードが同時に向上します。
3.期限(いつまでに、どうしてほしいか)
期限が書かれていないと、相手は「急ぎかどうかわからない」「自分の優先順位でいいのか判断できない」といった迷いが生じ、対応が遅れることがあります。
また、「どうしてほしいか」が明示されていないと、返信の内容にズレが出たり、意図と異なる動きにつながってしまいます。
たとえば……
上記の件、7/10(水)中にご意見をいただけるとありがたいです。
難しければ、案Aで進めようと思いますのでご確認ください。
このように期限+次のアクションをセットで伝えることで、相手は自分の対応可能時間と照らし合わせてスムーズに判断できます。

アクションの明示は、「伝えたのに動いてくれない」というすれ違いも防ぐための大事なひと工夫です。
伝わるチャットに変える!改善ビフォーアフター
では、実際にどんなふうにチャットの文章を書けばよいのでしょうか?
ここでは、よくあるNGチャットの例(Before)をもとに、具体的にどう改善すればよいか(After)を紹介します。
例1:用件だけで判断できないパターン
【Before】
この件、どうしましょうか?
このチャットの問題点は以下のとおりです。
- 何の件についてか不明確
- 相手に背景の確認や質問を促す必要がある
- 判断材料が提示されていない
【After】
◯◯の進め方について、方向性のご相談です。
現状、案A(簡易版)と案B(詳細版)の2パターンがあります。
工数を考えるとAが現実的ですが、品質を優先するならBもありかと考えています。
8/10(水)中に方針を決めたいのですが、◯◯さんのご意見をいただけますか?
改善したポイントは以下のとおりです。
- 目的が一文目に明示されている
- 検討材料が具体的で、相手が判断しやすい
- 期限がはっきりしているため、優先度も判断できる
例2:行動につながらない相談系パターン
【Before】
来週の件、ちょっとご相談したいです。
この文章の問題点は以下のとおりです。
- 相談内容が予測できないため、準備がしづらい
- 「来週の件」が何を指しているのか曖昧
- チャットで済むのか、ミーティングが必要なのか不明
【After】
来週の営業資料作成について、ご相談したいことがあります。
全体構成を先に共有すべきか、まずラフ案を作ってから話すべきかで迷っています。
今週中に、5〜10分程度、Zoomでお話できるタイミングがあれば教えてください。
改善したポイントは以下のとおりです。
- 何の相談か明確で、話すポイントも事前共有されている
- 手段(Zoom)と所要時間(5〜10分)を明記
- 相手が予定を立てやすく、応じやすい内容になっている
例3:期限・優先度が伝わらないパターン
【Before】
時間あるときにチェックお願いします。
この文章の問題点は以下のとおりです。
- 相手の判断に委ねすぎており、相手が動きづらい
- どこをチェックするのか明記されていない
- 期限が書かれておらず、後回しにされやすい
【After】
添付のイベント告知文、内容とトーンについてご確認ください。
特に、「参加条件」の書き方が硬すぎないかを気にしています。
8/8(月)午前中までにフィードバックいただけると助かります。
改善したポイントは以下のとおりです。
- 何を見て、どこに注目してほしいのかが具体的になっている
- 確認の目的と期限が明確である
- 相手の行動に迷いがなく、1往復で済みやすい
日々のやりとりに、そのまま使えるチャットテンプレート
さまざまなシーンに使えるチャット文テンプレートを紹介します。自分用にカスタマイズして、定型文として使い回すのもおすすめです。
判断をあおぐテンプレート
◯◯の件、判断のご相談です。
現在、A案とB案を検討中で、それぞれ◯◯というメリット・懸念があります。
7/12(金)中に方向性を決めたいので、◯◯さんのご意見をいただけますか?
確認依頼テンプレート
添付の◯◯資料をご確認ください。
特に◯ページ目の◯◯について、内容・表現に違和感がないかご意見いただけると助かります。
8/15(月)午前中までに返信いただけるとありがたいです。
簡易な日程調整テンプレート
◯◯の件、5〜10分程度でZoom相談できる時間を探しています。
今週中にお時間ありますか?空いている候補日があれば教えてください。
非同期コミュニケーションを快適にするための考え方
チャットをうまく活用するには、伝え方を工夫するだけでなく、「コミュニケーションの前提」を見直すことも欠かせません。
とくに、リモートワークやフレックス制度など、多様な働き方が進む中で注目されているのが「非同期コミュニケーション」です。
これは、相手のオンライン状況や即時対応を前提としない、ゆるやかな情報伝達のスタイルです。
ここでは、非同期のメリットを最大限に活かすために意識したいポイントを解説します。
チャットの返事を「即レス前提」にしない習慣
「とりあえずチャットしたのに、すぐ返ってこない……」と感じたことはありませんか?
それは、無意識に「即レス前提」でやりとりしているサインかもしれません。
チャットは便利ですが、相手にも集中タイムや予定があるため、常に画面を見ているとは限りません。
このような状況で「すぐ返信がこない=無視された」と捉えると、不要なストレスや不信感が生まれやすくなります。
そのためには、自分自身も送ったら一旦忘れるくらいの気持ちでチャットを扱うことがポイントです。
また、急ぎの場合は最初から「急ぎです」と明示する、あるいは他の手段(電話・Zoom)を選ぶといった線引きも必要です。

「即レスを期待しない」と決めることで、チャットの運用が快適になります。
相手の稼働時間を意識したチャット設計
非同期コミュニケーションを活かすうえで見落とされがちなのが、「相手の働き方に合わせたチャット設計」です。
たとえば、時短勤務のメンバーや海外在住のスタッフに「午後対応でOKです」と送っても、そもそも午後は稼働していない可能性があります。
また、朝一番に長文チャットを送りつけてしまうと、相手はその日一日のリズムを崩されてしまうこともあります。
たとえば、午前中にチェックするのが難しいと聞いている相手には、「明日中の確認で大丈夫です」などと書くだけで、相手の心理的な負担が減ります。

自分の都合で送るのではなく、相手の都合を前提に送る姿勢が重要です。
ラリーを減らすと業務効率アップ&信頼関係も築ける
チャットでのラリーを減らすことは、単に時間短縮になるだけでなく、仕事の質や人間関係にも良い影響をもたらします。
ここでは、ラリーを減らすことで得られる効果をふたつの視点から解説します。
チャットの見直しで業務スピードが向上
ラリーが多いチャットは、都度確認や追記が発生し、そのたびに業務の手が止まってしまいます。
しかし、送るメッセージの内容と構成を工夫し、一度のやりとりで用件を完結できるようにすれば、やり取りの回数はぐっと減ります。
それにより、受け手も送り手も「無駄な確認」や「返信待ちの時間」が減り、全体の業務スピードが明確に向上します。
とくに複数の案件を同時並行で進める場合、この効果は大きく、全体のタスク管理もしやすくなります。
また、ラリーが減るとチャットを見る回数も減るため、集中力の妨げが減り、ミスの減少や質の向上にもつながります。
結果として、短時間でより多くの成果を出すことが可能です。
ラリーの少ないチャットは信頼にもつながる
やりとりがスムーズで無駄が少ないチャットは、相手に「この人は仕事の進め方が効率的だ」「仕事ができて信頼できる」と感じさせる要素になります。
信頼関係が築けていれば仕事を安心して任せてもらえるので、仕事の範囲や裁量も広がりやすくなります。
反対に、何度も確認し合わなければならないチャットは、「準備不足」や「コミュニケーション力の低さ」と受け取られるリスクがあります。
また、ラリーが多いと、互いの時間を奪い合うことにもなり、結果的に疲弊して関係性が悪化することもあります。
このように、ラリーを減らすことは、単なる効率化にとどまらず、良好な人間関係づくりにも寄与します。
まとめ
チャットのラリーを減らすポイントは「目的・要点・期限」を明確に伝えるチャットの基本構成を守ることです。相手の働き方を尊重し、即レスを期待しない非同期コミュニケーションの意識も求められます。
ラリーが減れば業務スピードが向上し、信頼関係の構築にもつながります。効率的なチャットのやり取りで短時間でも成果を出せる働き方を実現しましょう。