会社員として働きながら「いつかフリーランスに転向したい」と考える人は多くいます。時間や場所に縛られず、自分のペースで仕事ができる自由な働き方は、魅力的に映るのでしょう。
しかし、勢いだけで会社を辞めてしまうと、理想とはかけ離れた現実に直面してしまうこともあります。本記事では、会社員からフリーランスになる前に知っておきたい7つの重要なポイントを解説します。会社員歴10年+フリーランス歴10年の経験から得たリアルな視点でお届けします。
独立後に後悔しないために、今のうちからしっかり備えておきましょう。

この記事はこんな方におすすめです。
- 会社員を辞めてフリーランスになりたいと考えているが、不安がある方
- フリーランスの働き方や収入の仕組みを事前に知っておきたい方
- 副業から独立を目指していて、準備や判断基準を知りたい方
- 時間に縛られずに働きたいけれど、現実的に可能か知りたい方
1.社会保険・税金の仕組みが変わる
会社員からフリーランスになると、まず直面するのが社会保険と税金の制度の変化です。これまで会社が自動的に処理してくれていたことを、すべて自分で管理しなければならなくなります。
何も知らずに独立すると、思わぬ出費や申告ミスで損をしてしまう可能性もあります。フリーランスになる前に、最低限知っておくべき制度の基本を確認しておきましょう。
健康保険・厚生年金→国民健康保険・国民年金に
会社員の間は健康保険と厚生年金でしたが、フリーランスになると「国民健康保険」と「国民年金」に切り替わります。
国民健康保険の保険料は前年の所得に応じて決まるため、所得が高い人ほど保険料も高いです。また、国民健康保険には、健康保険にはある傷病手当金などの所得補償はありません。
国民年金の保険料は所得がいくらでも同じですが、年度によって多少変動します。ちなみに令和7年度は月17,510円です。また、厚生年金に比べると国民年金の将来の受取額は少ないため、自分でiDeCoなどの制度を活用し、老後資金を準備する必要があります。
参照元:日本年金機構|国民年金保険料
所得税・住民税→確定申告で自分で管理
フリーランスは、年に一度の確定申告で所得税を自分で計算・申告・納付します。その結果をもとに住民税も決まります。
会社員時代は年末調整で完結していた税金管理が、自分の責任になるという点が大きな違いです。特に税金の知識がない方は、調べることやわからないことが多すぎて、最初は戸惑うことが多いでしょう。
控除の仕組みや経費の種類などを知らないと納税額が膨らんで損してしまうこともあるため、早めに仕組みを学んでおくことが大切です。
フリーランスになって本業に集中するためにも、会社員のうちに税務の基本をしっかり押さえておきましょう。
2.会社の肩書きより「信用」がすべてになる
会社員時代は、所属する企業名がある程度の信用を担保してくれますが、フリーランスになるとその後ろ盾がなくなります。
だからこそ、自分自身のスキルや人柄、実績が直接的に信頼につながります。フリーランスは信頼をどう築くかが仕事の受注に直結します。
社名の肩書がなくなると初対面の印象が変わる
会社員であれば、「○○株式会社の○○です」と名乗るだけである程度の信頼を得られます。しかしフリーランスになると、初対面での信用の獲得が一気に難しくなります。
たとえ高いスキルがあっても、相手がそれを知らなければ意味がありません。
自己紹介一つとっても「何ができる人なのか」を明確に伝えるスキルが求められます。肩書きに代わる「自分のブランド」を意識して作る必要があります。
ポートフォリオ・実績・紹介が信用の代わりになる
フリーランスにとっての名刺代わりは、これまでの実績や成果物です。
クライアントは「この人に任せて大丈夫か」をポートフォリオなどから判断します。過去にどんな仕事をしてきたか、どのような成果を出したかを、見やすく整理しておくことが大切です。
また、職種によっては紹介による仕事の受注もあるため、人とのつながりを大切にし、誠実な仕事を積み重ねていくことで信頼が広がっていきます。
SNSやnoteなどで「見える信用」を作る方法
最近ではSNSやブログ、noteなどを通じて、自分の考え方や専門性を発信することが「見える信用」を作る手段になっています。
実績の一部や過去のクライアントとのやりとりを発信することで、スキルだけでなく人柄も伝わります。
継続的な発信によって、初めてのクライアントとの距離を縮めることができ、仕事の依頼にもつながりやすくなります。
3.スキルがあっても「売上」は作れないことがある
「自分にはスキルがあるから大丈夫」と思って独立しても、意外と売上が上がらないケースは少なくありません。フリーランスで収入を得るには、スキルに加えて売る力と伝える力が必要です。どんなによいサービスも、誰にも届かなければ意味がないという現実があります。
よい商品・サービス ≠売れるもの
サービスの質が高くても、それだけでは売れません。売れる商品には「ニーズに合っている」「わかりやすい」「買う理由がある」といった条件がそろっています。
自分がよいと思うサービスと、相手が欲しいサービスにはギャップがあることも多いため、常に相手目線で見直す姿勢が必要です。
価値の見せ方、伝え方次第で反応は大きく変わります。
会社員時代に「売る仕組み」を観察しておくと有利
会社員時代には、意識して「どうやって商品が売れているか」を観察しておくことをおすすめします。
営業フロー、価格設定、顧客とのやりとり、広告・販促の工夫などは、独立後に必ず役に立ちます。
特に自分が直接関わっていなかった部署の動きを見ることで、ビジネスの全体像がつかめるようになります。売る仕組みへの理解があるかどうかで、フリーランスになった後の展開が大きく変わります。
4.フリーランスの時間管理は生産性・成果ベース
フリーランスになると、会社員のように「何時から何時まで働けばOK」という時間管理ではなくなります。時間を費やしたこと自体に価値があるのではなく、どれだけ成果を出せたか、どんなインパクトを残せたかが問われる働き方です。
自分の時間をどう使うかを、自ら判断・選択していく必要があります。
勤務時間ベースの管理ではなくなる
フリーランスにとって重要なのは、何時間働いたかではなく、どんな結果を出せたかです。長時間働いても売上につながらなければ意味がありません。
会社員時代のように「決まった時間内で言われたことをやる」働き方から、「成果に直結することに集中する」働き方への転換が求められます。
そのためには、自分でスケジュールを立て、時間の使い方に責任を持つ意識が不可欠です。
タスクの価値判断を学ぶ必要性
フリーランスになると、1日の中で「何を優先すべきか」を判断する力が必要になります。
たとえばメール返信や資料作成などの細かい作業ばかりに時間を使ってしまうと、本質的な売上や価値の創出から遠ざかってしまいます。
「今やるべきことは、次の成果につながるか?」という問いを常に持つことで、生産性の高い時間の使い方が可能です。
タスクの重みを見極める目を養うことが、フリーランスの時間管理には欠かせません。
5.営業・交渉は全員が必須スキル
フリーランスになると、どんな職種であっても営業や交渉からは逃れられません。デザイナーやライターなど、いわゆる制作系の仕事であっても、クライアントに提案し、価格交渉し、契約をまとめるプロセスはすべて自己責任です。「営業が苦手だから」は通用しません。
営業職でなくても提案や価格交渉は避けられない
フリーランスは、自分の仕事を獲得するための営業活動が必要不可欠です。営業職でないからといって、営業をしなくていいわけではありません。
また、価格や納期の交渉をする場面は多く発生します。
自分の価値を伝え、納得のいく条件で仕事を進めるためにも、基本的な営業スキルを身につけておくべきです。
クライアントの言いなりにならないための最低限の知識
「報酬はこれでお願いできますか?」「納期は明日で」などと無理な依頼を受け続けてしまうと、時間も体力も削られ、収入も上がりません。
この点、業界の報酬相場や自分の適正単価、必要な作業時間などを事前に把握しておくことで、過度な値下げや無理な要求を回避できます。
また、きちんと断る力も重要です。「○○円以上の案件しか受けません」といった線引きも、長く続けるためには必要な判断です。
やりたくない人ほど「型」を先に持っておくべき
営業や交渉に苦手意識がある人ほど、テンプレートやフレーズ、トークの流れなどの型を用意しておくと安心です。
たとえば、「お見積りは○○円です。」「このスケジュールでは対応いたしかねます。」といった言い回しを決めておくだけでも、やりとりがスムーズになります。
毎回ゼロから考えずに済むことで、精神的な負担も軽減されます。
6.副業期間を使ってテストするのが鉄則
会社員として働きながら副業に取り組むことで、自分のビジネスが本当に成立するかをテストできます。
独立してから「思ったより稼げない」「需要がない」と気づくのではなく、リスクを抑えた状態で見通しを立てられるのが副業の大きなメリットです。
時間の制約の中で売上が立つかを見極められる
本業のある中で副業に取り組むことで、限られた時間でも成果を出せるかが試されます。
もし時間制約がある中でも収益を出せるなら、フリーランスとして本格的に時間を割けば、より大きな成果が出る可能性もあります。
反対に、時間をかけてもまったく収入につながらないなら、方向性の見直しが必要かもしれません。
見通しが立つか立たないかでリスクの大きさが変わる
副業で売上の見通しがある程度立てられたら、独立後の精神的な不安も大きく減ります。
一方で、まったく手応えがないまま独立すると、「貯金が尽きそう」「仕事が見つからない」といったプレッシャーに押しつぶされるリスクがあります。
副業は、見込みのないプランを排除し、可能性のあるプランに集中するフィルターにもなります。
7.会社を辞めた後の孤独を防ぐ仕組みを作っておく
会社員を辞めると、当たり前にあった同僚との雑談や相談相手、定期的な人との接点がなくなります。思った以上に孤独感が大きく、精神的にしんどくなる人も少なくありません。これを回避するには、「人とつながる努力」も必要です。
働く時間が短くなってもつながりはキープする
週休3日や1日数時間などのゆるい働き方を目指す場合でも、社会との接点を意識的に維持することが大切です。
オンラインコミュニティや勉強会、SNSなどを活用して、定期的に人とつながる場を持ちましょう。
そうした緩やかなつながりから、意外な仕事のチャンスや情報が生まれることもあります。
家族や友人など身近な人が支えになる
自分の状態を理解し、応援してくれる人の存在は大きな支えになります。
孤独になりがちなフリーランスこそ、身近な人との関係性を大事にすべきです。
困ったときに相談できる相手がいるだけで、判断や行動がポジティブになります。
まとめ
フリーランスとして独立する前に知っておきたいのは、実務的な制度の変化だけでなく、働き方・考え方・人間関係までも大きく変わるということです。社会保険や税金の仕組み、信用の作り方、営業スキル、時間管理、孤立の対策などは、会社員のうちに準備しておくことで安心してスタートが切れます。