都会の喧騒を離れて、もっと自由に、もっと自分らしく働きたい……。そんな思いを持つ人たちの間で、地方移住とフリーランスを組み合わせた新しいライフスタイルが注目を集めています。
リモートワークの普及や価値観の変化により、都会に縛られない働き方が現実的な選択肢となりつつあります。
この記事では、「地方移住×フリーランス」という働き方の魅力と課題、向いている職種や実現までのステップなどを網羅的に解説します。
自然に囲まれた土地で、ゆとりある働き方と豊かな暮らしを両立させるヒントを見つけてください。

この記事はこんな方におすすめです。
- 都会の生活に疲れ、自然のある場所で暮らしながら働くスタイルに憧れている方
- フリーランスとして働いており、今後の働き方や住む場所を見直したいと考えている方
- 地方移住に興味はあるが、仕事や収入面での不安を抱えている方
「地方移住×フリーランス」という働き方、なぜ今注目?
新しい働き方として注目を集めているのが、「地方移住×フリーランス」です。
内閣府によれば、東京圏在住者の地方移住への関心は2020年~2023年までの間に全世代で増加しました。特に20歳代で高い関心があります。
参照元:内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生|地方創生10年 移住への関心は全年代で増加、特色ある取り組みへの支援強化へ

テレビ番組などでもよく、「憧れの地方暮らし」特集が組まれたり、地方で活き活きと暮らす著名人が紹介されたりしていますね。
都市部から離れ、自然豊かな土地で自由な時間と仕事を両立させるライフスタイルが広がりを見せています。ここでは、なぜ今この働き方が注目されているのか、その背景を探ります。
リモートワークやSNSの普及
コロナ禍以降、急速に進んだリモートワークの普及により、場所にとらわれない働き方が一般的になりました。
通勤の必要がなくなり、自宅やカフェ、地方でも仕事ができるようになったことで、多くの人が「本当に住みたい場所」に目を向け始めています。
また、SNSの普及も背景にあります。かつては「地方=閉じた環境」と見る向きもありましたが、今ではSNSやYouTube、noteなどを通じて全国・世界に向けて発信できます。
地方にいながら情報発信・仕事獲得ができ、孤立を感じにくくなっています。
都会のコスト・人間関係からの解放を求める流れ
都市部での生活は、家賃や交通費、人間関係のストレスなど、コスト面・心理面での負担が大きいと感じる人も少なくありません。
地方移住は、そうしたストレスからの解放を求める人にとって魅力的な選択肢となっています。
広い住居、静かな環境、地域との緩やかなつながりなど、心地よい暮らしを実現しやすいこともポイントです。
価値観の多様化と「豊かさ」の再定義
近年、「年収の高さ=豊かさ」という価値観から、「時間の自由」「心の余裕」「自分らしい暮らし」を重視する価値観へのシフトが進んでいます。
物質的な豊かさよりも、精神的なゆとりやライフスタイルの満足度を求める人が増えており、地方でのゆるやかな暮らしに共感する層が拡大しています。
地方自治体による移住支援制度の充実
多くの自治体が、人口減少対策として移住支援金、空き家バンク、創業支援、地域おこし協力隊制度などを整備しており、移住のハードルが下がっています。
特にフリーランスにとっては、初期費用や生活コストの負担が軽減されるため、選択肢として現実味を帯びています。
地方移住フリーランスの魅力・メリット
地方移住を検討する場合、そのメリット・デメリットを知っておくことが大切です。
まずは、地方に移住しながらフリーランスとして働くことで得られる具体的なメリットについて見ていきましょう。生活面や働き方の自由度にどのような変化があるのかを整理します。
時間に余裕ができる
地方移住を果たすと、時間に余裕ができると感じる方は多いです。
理由はいろいろありますが、たとえば地方では満員電車で通勤することが少なく、移動にかかる時間も都市部より短く済むケースが多いです。そのため、毎日に「ゆとりの時間」が生まれます。
また、生活インフラがコンパクトにまとまっている地域も多く、スーパーや病院、役所なども車で数分の距離にあることが一般的です。ちょっとした用事にかかる時間も少なく、日常生活がスムーズに進みます。
さらに、都市部のような過密な人間関係や、予定に追われる生活とは異なり、地方では時間に対するプレッシャーが少なく、自分のペースで過ごしやすい点も特徴です。
広めの住居で仕事環境を整えやすく、作業効率を上げやすいことも、時間の余裕につながります。
生活コストが下がる
地方は、家賃や食材など生活に関わる基本的なコストが都市部よりも低く抑えられることが多く、同じ収入でも生活水準を維持しやすい環境です。
たとえば東京ではワンルームの価格でも、地方では2LDKや庭付き一戸建ての借家に住めることもあります。
さらに、外食先がある程度限られるため、外食中心だった生活が自炊中心になることで食費を抑えつつ健康的な生活にもつながります。
「地方では車が必要では?」と思う方も多いですが、どの地方に住むのかによって大きく変わります。
車が必須の地域はありますが、地方でも公共交通機関がある程度充実しているところも多いので、場所の選び方次第で車がなくても十分生活できます。自転車でサクサク移動することも可能です。

ちなみにわたしは地方暮らしですが、以前保有していた車を手放しても特段問題はありませんでした。バスもあるし、たまにタクシーを使っても、車を保有していたときよりコストをかなり抑えられています。
自然を感じやすく心の余裕ができる
自然を感じやすい環境に身を置くことは、メンタルヘルスや創造性の面でもプラスに働きます。
山や海、田園風景といった自然に日常的に触れることで、心が落ち着き、リラックスした状態で日々を過ごせます。
定期的な自然とのふれあいは、モチベーションの回復やストレス解消にも効果的です。
また、気候や四季の変化を肌で感じる暮らしは、心にゆとりをもたらし、仕事への前向きな姿勢を支える土台となります。

20代の頃は都会に住んでいましたが、毎日大きな建物の中や人混みの中にいて、息苦しく感じるときもありました。
雑音が少なく集中できる
地方の静けさは、生産性向上に直結する要素のひとつです。
都会のような車の騒音や人混みのざわめき、ビルや交通機関の喧騒がないため、思考のノイズが減り、目の前の業務に深く没頭できます。
特に文章作成やデザイン、プログラミングなど、集中力を必要とする仕事においては、環境による違いが成果に直結することも珍しくありません。
作業中の中断の少なさは、効率とクオリティの両立を可能にします。
地方移住フリーランスのデメリットと対策
地方移住のメリットの裏には、当然ながら課題や不安も存在します。地方移住という決断をするには、メリット以上にデメリットをよく把握しておくことが大切です。
ここでは、地方に移住してフリーランスとして働く際に直面しやすいデメリットとその対策について解説します。
地方特有の文化に合わないとつらい
地方では、地域ごとに独自の文化や慣習が根付いています。外から来た人に対して警戒心を抱くコミュニティもあり、馴染むまでに時間がかかることもあります。
また、地域活動や自治会の行事への参加を求められるケースもあり、それが負担に感じられる人も少なくありません。
対策
短期滞在やお試し移住制度を利用し、現地での人間関係や生活リズムを体験してみることが効果的です。
実際に暮らしてみることで、表面的にはわからなかった価値観の違いや習慣のズレに気づくことができます。
また、移住者支援制度や地域おこし協力隊など、外部人材の受け入れに慣れている地域を選ぶことで、スムーズに馴染みやすくなる場合もあります。
地域の人と積極的に挨拶を交わす、地元のイベントに参加するなど、自ら関係を築こうとする姿勢を持つことも、信頼構築には欠かせません。
ビジネスチャンスのリアルな交流が少ない
リアルな場での情報交換や人脈形成は、新しい仕事のチャンスを広げるうえで非常に重要です。
クライアントとの信頼関係を築いたり、思わぬコラボレーションが生まれたりするのは、実際に会って話すことで生まれる偶然の出会いがきっかけになることも多いものです。
しかし、地方では都市部に比べて業界の展示会やセミナー、ネットワーキングイベントが開催される頻度が少なく、同業者との交流や最新トレンドに触れる機会が限られます。
その結果、視野が狭くなったり、成長のスピードが鈍化したりするリスクもあります。
対策
こうしたデメリットを補うには、意識的に外の世界とつながる機会を設けることが大切です。
たとえば、以下のようなアクションが有効です。
- 定期的に都市部へ出張し、リアルイベントや勉強会に参加する
- オンラインセミナーやウェビナーを活用して最新の情報や人脈を得る
- SNSやブログを通じて自ら発信を行い、逆に仕事の縁を呼び込む
- 地方のビジネス系コワーキングスペースに通い、地域の起業家やフリーランスとつながる
ネット環境が弱い地域がある
地方の中には、光回線や高速インターネットの整備が進んでいない地域もまだ存在します。
特に山間部や過疎地では、安定したネット回線の確保が難しい場合もあるため、フリーランスとして仕事を行ううえで大きな課題となり得ます。
対策
仕事に支障をきたさないためにも、移住先を決める前には必ず現地のインターネット環境を確認しましょう。
回線業者のエリア確認ページを見る、目星をつけた物件の不動産業者に確認するといった方法があります。
また、そもそもネット環境が充実した地方都市やその周辺エリアを選ぶことで、安定した通信環境を確保できます。
孤独感を抱く人も
地方に移住すると、これまでの人間関係やコミュニティから離れることが多く、知り合いがほとんどいない環境から新生活をスタートさせるケースがほとんどです。
そのため、孤独感を強く感じたり、精神的な不安を抱えたりする人がいます。
特に一人で長時間作業するフリーランスの場合、人との交流が減ることは心の健康にも影響を及ぼすことがあります。
対策
孤独感を軽減するためには、たとえばオンラインコミュニティやSNSを活用して、同じような境遇の人や同業者とつながることが効果的です。
また、地元のワークショップや地域のイベントに積極的に参加するなど、直接人と会って交流する機会を増やすことも大切です。

焦らず、自分のペースで地域との関わりを深めていくことが、孤独感の解消につながります。
地方移住×フリーランスに向いている仕事
地方でフリーランスとして安定的に収入を得るには、職種の選択も重要なポイントです。
どのような職種が地方移住と相性がよいのでしょうか?ここでは、時間や場所にとらわれにくく、かつ安定した収入が見込める仕事を紹介します。
Webライター
文章を書くスキルがあれば始めやすく、案件も豊富です。
企業のオウンドメディア記事やSEO記事、商品レビューなど、ジャンルも多岐にわたります。
PCとインターネット環境さえあればできるため、地方との相性は抜群です。実績を積めば、単価アップや長期契約も見込めます。
Webデザイナー
デザインソフトが使えれば、地方でも高単価の案件を受けることが可能です。
バナー制作、LPデザイン、サイト構築など、ニーズは常に高く、クラウドソーシングやSNS経由での受注も活発です。
制作に集中できる静かな環境がある地方は、むしろ好条件といえるでしょう。
動画クリエイター・編集者
YouTubeなど動画市場の拡大により、編集スキルへの需要は急増しています。編集ソフトを使えば、どこでも作業が可能です。
地方の美しい風景を素材にしたVlogや観光動画など、自分の住んでいる地域を活かしたコンテンツ制作もできます。
プログラマー
コーディングスキルがあれば、地方にいながら全国・世界の仕事ができます。
特にWebアプリ開発やフロントエンド開発の案件はオンライン完結が多く、地方移住との親和性が高い職種です。
自習・独学で学べる教材も豊富にあるため、スキルアップも図りやすいです。
オンライン講師
スキルや知識をオンラインで教える仕事も地方から可能です。
語学、プログラミング、資格試験対策、ヨガなど、需要の高い分野であれば安定した収入が見込めます。
自宅で収録やライブ配信を行うスタイルが主流なので、地方での生活にもマッチします。
地方移住フリーランスになるまでのステップ
「地方に住みながら自由に働く」という理想のライフスタイルを現実のものにするためには、計画的かつ段階的な準備が不可欠です。
この章では、移住前から移住後までの具体的なステップとポイントを解説します。一歩ずつ進めることで、安心して新しい環境に馴染み、快適に働ける基盤を作りましょう。
移住前の準備
まず、移住後の生活費や予備資金を確保するための貯金計画を立てましょう。フリーランスの場合、収入が安定しない可能性もあるため、生活費の6ヶ月〜1年分を目安に貯蓄を準備しておくと安心です。
また、現状の収入源をしっかり確保し、地方でも継続可能な仕事の形を構築しておくことが大切です。可能なら、リモートワークやオンライン案件の割合を増やす工夫も有効です。
ネット回線の速度や安定性、医療施設の充実度、交通アクセス、スーパーの立地などインフラの利便性も事前にしっかり調査しましょう。
自治体のホームページで移住者向けのページを設けていることも多いので、必ずチェックしてください。お問い合わせ先なども載っているので、不明点があれば聞いてみましょう。
これらは安心して暮らしながら仕事をするための重要なポイントです。
場所選び
次は場所選びです。
以下のような項目をしっかりチェックして、場所選びは慎重におこないましょう。
- インターネット環境
- 住居の家賃相場
- カフェやコワーキングスペースの有無
- 子育てや教育環境
- 地域コミュニティの雰囲気や受け入れ体制 など
実際に行ってみないとわからないことも多いので、少なくとも一度は短期ステイしてみるのがおすすめです。
また、地方と一口に言っても、地域によって環境や利便性は大きく異なります。
いわゆる「田舎」と呼ばれる地域では、インターネット環境の不安定さ、公共交通の不便さ、そして人間関係の濃さからくるストレスなど、働きながら生活する上でのハードルが高くなることがあります。
そこで注目したいのが、「地方都市」という選択肢です。
地方都市は、公共交通機関や病院、大型スーパーなど、ある程度の都市機能が整いながらも自然が身近にあり、生活コストも抑えやすいというバランスの良さが特徴です。
都会の便利さと自然の豊かさの両方を享受できるため、フリーランスの働き方にも適しています。
移住後の働き方づくり
まずは自分の集中できる時間帯を見極めましょう。たとえば午前中に集中して仕事を進め、午後は散歩や趣味、地域の交流に充てるなど、バランスの良いタイムスケジュールを作ることが大切です。
また、作業環境を快適に整えることも欠かせません。
自宅での仕事がメインとなるケースが多いため、デスクや椅子は長時間の作業に適したものを選び、照明や空調にも気を配りましょう。インターネット回線の安定性を確保するための設備投資も必要です。
地方ならではのネットワークづくりも意識しましょう。地元のコワーキングスペースや交流イベントに参加し、他のフリーランスや地元の事業者と関係を築くことで、孤立を防ぎます。新たな仕事のチャンスにもつながります。
新しい環境に慣れるまでには時間がかかることもありますが、焦らずに自分のペースで生活と仕事の両立を模索していくことが大切です。

定期的に自身の働き方や生活を見直し、必要に応じて環境やスケジュールの調整を行うことで、充実した地方生活を実現できます。
地方移住×フリーランスQ&A
最後に、地方移住を検討する人が不安に感じやすい点について、よくある質問形式でまとめます。
家族が反対する場合は?
家族が都会での生活に慣れている場合、地方移住への不安や抵抗感を持つことがあります。
無理に話を進めず、まずは一緒に短期滞在してみることがおすすめです。
また、移住によるメリット(例:家賃の安さ、自然環境のよさ、教育環境など)を具体的に示すことで、納得を得やすくなります。
収入は下がらないの?
フリーランスの場合、地方移住そのものが収入減に直結するわけではありません。
特にリモートで完結する仕事の場合、都会にいても地方にいても報酬は同じです。
ただし、フリーランスである以上、自分で積極的に案件を獲得していく姿勢は必要です。
SNSやポートフォリオサイトを活用して、継続案件や長期契約を確保する努力が収入維持のカギとなります。
仕事がなくなったらどうする?
フリーランスにとって仕事の波はつきものです。あらかじめ複数の収入源を持っておくことで、リスクを分散できます。
たとえば、ライティングと動画編集、あるいは講師とコンサルティングなど、自分のスキルを複数方向に展開しておくことが有効です。
また、クラウドソーシングサイトでのアピールや営業活動をルーティン化するなど、仕事を切らさない仕組みを作ることも大切です。
まとめ
「地方移住×フリーランス」という働き方は、現代の価値観に合った自由度の高いライフスタイルです。ただしデメリットや注意点もあるため、事前の調査や準備を怠らず、納得のいく形で移住を決めましょう。